こころの病気 =精神疾患=

障害認定基準の中では「精神の障害は多種であり、症状は同一原因であっても多様である」として「認定にあたっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮する」とされています。

精神の障害は、原則として症状固定による障害認定日の到来はないものとされています。よって、初診日から1年6月を経過し障害認定日を迎えると請求が可能になります。
20歳前傷病については20歳到達または1年6月経過いずれかの遅い方になり、知的障害・発達障害の多くは20歳前傷病となるため、20歳到達によって障害年金請求となります。

精神の障害認定基準では、障害年金の支給対象となる精神疾患(ICD-10コード付記)を次の5つの障害に分けて認定基準と認定要領を示しています。ICD10コードとは、死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類です。このコード番号が、記入漏れ及び年金支給対象外となっていた場合、不支給になることがあります。認定される上で非常に重要なコード番号です。

A統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害

いわゆる「精神病」に該当される傷病はAの認定要領に沿って認定されます。傷病が重複していても併合はされず、諸症状を総合的に判断して認定されます。ひきこもりについては、精神障害の病状の影響によって、継続して日常生活に制限が生じている場合は、考慮されます。就労につきましては、最下段をご参照下さい。

(1)統合失調症(F20-F29)

「罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転をみることもあり、またその反面急激に増悪し、その状態を持続する事もある。」よって「発病時からの療養及び症状の経過(発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況)や予後を考慮する」としています。
統合失調症の陽性症状(妄想・幻覚等の異常体験)だけでなく、その後の陰性症状(自閉・感情の平板化、意欲減退等の抑うつ状態~残遺状態)についても考慮されます。この残遺状態が長時間持続し、自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限が認められれば、1級または2級の可能性を検討されます。

(2)うつ病・躁うつ病(気分(感情)障害)(F30-F39)

「本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものである」と指摘しています。
つまり、統合失調症、気分(感情)障害については、良くなったり悪くなったりする病気、と障害認定基準には書かれています。その上で「したがって現症のみによって認定する事は不十分」であって「症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況等)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後を考慮する」としています。適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤な躁やうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討されます。

一方で、人格障害(性同一性障害など)は原則として認定の対象外です。また、神経症(適応障害、不安障害、パニック障害、強迫性障害、パーソナリティ障害、身体表現性障害など)にあっては治癒可能なため、原則として認定の対象となりませんただし、「その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症又は気分(感情)障害に準じて取扱う。なお、認定にあたっては、精神病の病態がICD-10コードによる病態区分のどの区分に属する病態であるかを考慮し判断すること」とされています。また、当初神経症と診断された後にうつ病や躁うつ病、統合失調症などに診断名が変更となり、精神の障害年金の申請を行い、障害年金が認定されることもあります。こころあたりのある方は、当センターまでご相談ください。

(3)療養について

「通院の状況(頻度、治療内容等)を考慮する。薬物治療を行っている場合は、その目的や内容(種類・量・期間)を考慮する。また服薬状況も考慮する。」としています。入院時の状況(入院期間、院内での病状の経過、入院理由)は特に重要で、病棟内で本人の安全確保等のために常時個別の援助が継続して必要な場合は、1級の可能性を検討されます。在宅療養は、家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養している場合は、1級または2級の可能性を検討されます。受診していない期間については、通院や薬物治療が困難又は不可能な理由や代替療法の有無及びその内容が考慮されます。

(4)家族の日常生活上の援助・独居について

「家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する」としています。独居の場合は援助を受けずとも暮らせると判断されてしまうので、独居理由や独居になった時期は特に重要です。独居であっても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合は、2級の可能性を検討されます。

B症状性を含む器質性精神障害F00-F09

(1)認知症

  1. F00 アルツハイマー病の認知症
  2. F01 血管性認知症
  3. F02 他に分類されるその他の疾患の認知症
  4. F03 詳細不明の認知症

(2)高次脳機能障害

  1. F04 器質性健忘症候群、アルコールその他の精神作用物質によらないもの
  2. F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
  3. F07 脳の疾患、損傷及び機能不全による人格および行動の障害

(3)その他

  • F09 詳細不明の器質性又は症状性精神障害

症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経系統の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものです。また、「症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する」とされています。

高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する知的障害全般を指し、日常生活または社会生活に制約があるものが認定の対象となります。その障害の主な症状としては、失語、失行、失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。なお、障害の状態は、代謝機能やリハビリテーションにより好転も見られることから、脳疾患後遺症による肢体の麻痺については発症後6月経過後に症状が固定した日が障害認定日とされますが、高次脳機能障害には症状固定はありません。よって、性格変化、記憶障害等の請求については、基本的に発症から1年6月を待つ必要があります。

アルコール、薬物による不可逆的な精神障害についても障害年金の対象になりますが、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、「精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないもの は、認定の対象とならない」とされています。

Cてんかん(G40-G47)

てんかんの認定にあたっては、「その発作の重症度(意識障害の有無生命の危険性社会生活での危険性の有無(仕事ではどうか、集団ではどうか、車で事故を起こさないか)など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、社会的活動能力の損減を重視した観点から認定する。様々なタイプのてんかん性発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状や認知障害を有する場合には、治療及び病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する。また、てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。」とされています。

等級 障害の状態
1級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの
2級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 十分な治療にかかわらず、てんかん発作のA又はBが年に2回未満もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの
  1. 意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作→意識を失い、体が硬直、口から泡をふく、歯を食いしばる等
  2. 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
  3. 意識を失い、行為を途絶するが、倒れない発作→意識を失って、しゃべっている途中や動きが途中で止まる
  4. 意識障害はないが、随意運動が失われる発作→意識が失われないが、自分の意思の通りに行動できなくなる

また、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にはなりません

てんかん発作の頻度と回数に加えて精神症状があることを求められており、そうすると結果的にてんかんは他の精神疾患よりも認定基準上不利があります。
実務上では、診断書⑩ア・イと⑪現症時の日常生活能力の欄で主に判断されていますが、裏面⑩ウ2・3が軽度ですと、日常生活に制限が少ないとみられてしまいがちです。てんかんの障害認定は厳しいものがあります。

診断書を医師へ依頼する際は、次のことを伝えます。
◆発作の頻度と程度、発作時・発作前の様子
◆発作間欠期の様子(日常生活・社会生活支障の内容、周囲や福祉支援の内容)
◆診断書⑩アイ、⑪欄に詳細に症状を記載していただく

D知的障害(F70-F79)

知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にある者をいいます。
認定においては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いはせず、諸症状を総合的に判断して認定する。」とされています。

◆発育・養育歴、教育歴⇒特別支援教育、又は同等の支援の教育歴がある場合は、2級の可能性があります。
◆療育手帳の有無や区分⇒療育手帳で中度以上(IQ50以下)の場合は、1級又は2級の可能性があります。
◆中高年になってから判明した場合⇒療育手帳がない場合、幼少期から知的障害があることが養護学校や特殊学級の在籍状況、通知表等から客観的に確認できる場合は、2級の可能性があります。

E発達障害(F80-F98)

発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現する者をいいます。

発達障害については「知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。臭気、光、音、気温等の感覚過敏があり、日常生活に制限が認められればそれを考慮する。また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いの取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。」とされています。

発達障害は、通常低年齢で発症する疾患ですが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とします。

◆発達・養育歴、教育歴、専門機関による発達支援、発達障害自立訓練等の支援について考慮されます。
◆知的障害を伴う発達障害で、療育手帳の区分が中度より軽い場合は、発達障害の症状により日常生活に著しい制限が認められれば、2級の可能性を検討されます。
◆知的障害を伴わない発達障害は、社会的行動や意思疎通能力の障害が顕著であれば、それが考慮されます。
◆青年期以降に判明した発達障害については、幼少期の状況、特別支援教育又はそれに相当する支援の教育歴が考慮されます。

F就労と障害年金

精神・知的・発達障害において最も難しいのが、「就労」についてどのように考えるかです。詳細は、以下のリンクページをご参照下さい。

就労と障害年金①精神障害
就労と障害年金②発達障害
就労と障害年金③知的障害


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