人工透析の障害年金
人工透析は、2級に認定されます。なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定する、とされています。
一般的に、糖尿病の発病や腎疾患の初診日から人工透析に至るまでは、長期にわたります。従って、初診日証明をとろうとしたときには、既に当時のカルテが廃棄されていたり、廃院となっている場合が多く、難件となっていきます。私どもは、そんなお客様に対し、ヒアリングにじっくりと時間をかけ、わずかな糸口でも見つけようと努めてまいります。
また、腎疾患の症状として、悪心、嘔吐、疼痛、尿の異常、浮腫、高血圧等があるのですが、近所のクリニックへ行っていたり、心療内科や泌尿器科へ行っていたりと、実は別の科の初診があることがございます。そのため、「腎臓・膀胱の病気用アンケート」の提出も求められますので、その記載は慎重に行う必要があります。ご自分で障害年金の請求書を年金事務所へ提出しますと、更にあの書類が必要等、様々な書類を求められるケースがございます。
なお、人工透析の障害年金は、初診日から1年6月以内の場合、人工透析開始日から3か月経過すれば請求できます。ただし、この病気はゆっくりと進行するケースが多いため、発症から1年6月以内に人工透析を開始することは少ないです。1年6月経過後に人工透析を開始した場合は、3か月経過していなくても、事後重症請求や額改定請求を直ぐに行えます。事後重症請求は、請求した月の翌月分からの支払いとなりますので、請求が1か月でも遅れますと、遅れた月分の年金がもらえません。従って、お早めに障害年金の請求準備を始められた方がよいでしょう。
※腎臓移植の取扱いは、以下の通りです。
- 腎臓移植を受けた者に係る障害認定に当たっては、術後症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。
- 障害年金を支給されている者が腎臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。
糖尿病の障害年金
糖尿病は、インスリンというホルモンの働きが低下するため、体内に取り入れられた栄養素がうまく利用されず、血液中のブトウ糖が多くなっている状態のことを指します。血糖値が高い状態が続くと、様々な合併症を引き起こします。また、糖尿病患者は、今までの生活習慣を変えざるを得ない精神的ストレスや将来に対する不安から、うつ病になりやすいとも言われています。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。1型は、膵臓の細胞が壊れることにより全くインスリンが分泌されなくなるもので、若い人が発症しやすく、体型は痩せ型が多いです。最初は風邪に似た症状が見られ、その後のどが渇く、尿が多くなる、急激にやせるなどの症状がでてきます。1型は、インスリンが枯渇してしまう病気のため、インスリン注射を続ける必要があります。2型は、肥満、運動不足、ストレス等をきっかけに遺伝的に糖尿病になりやすい人がかかると言われています。ゆるやかに発病し、進行もゆっくりで自覚症状がないため、いつ発症したのかわからないまま健康診断や生命保険の加入時に発見されることがよくあります。従って、初診日の証明が困難なケースが多いです。
糖尿病の障害年金は、糖尿病のみの場合と、合併症がある場合とで考え方が異なってきます。
1.糖尿病のみの場合
必要なインスリン治療を行ってもなお、血糖コントロールが困難な方が対象となります。
具体的には、以下の条件を満たす方です。
- 90日以上のインスリン治療を行っている
- Cペプチド値(インスリンが膵臓からどの程度分泌されているかを把握する値)、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定程度
- 日常生活の制限が一定程度
3級に認定されるためには、検査日より前に90日以上継続して必要なインスリン治療を行っている方が、次のいずれかに該当する必要があり、2型糖尿病単独での3級認定は難しそうです。
- 内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時又は随時の血清Cペプチド値が、0.3ng/ml未満を示しで、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当する者
- 意識障害により自己回復ができない重症低血糖の所見が平均して月1回以上あり、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当する者
- インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシス又は高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上で、かつ、一般状態区分表のウ又はイに該当する者
なお、症状、検査成績及び具体的な日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定するとなっています。
※一般状態区分表
区分 | 一般状態区分表 |
---|---|
イ | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など |
ウ | 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり軽労働はできないが、日中の50%以上は、起居しているもの |
2.合併症がある場合
糖尿病性網膜症を合併したものは「眼の障害」、糖尿病性腎症を合併したものは「腎疾患による障害」、糖尿病性神経障害は、激痛、著明な知覚の障害、重度自律神経症状等があるものは「神経系統の障害」、糖尿病性動脈閉塞症や運動障害を生じているものは「肢体の障害」の認定基準により認定されます。
なお、
- 糖尿病単独でも該当し、糖尿病性腎症を併発している場合は、内臓疾患なので総合認定
- 糖尿病単独でも該当し、糖尿病性神経症で上肢や下肢の機能障害がある場合は、併合認定
とされます。