就労と障害年金②(発達障がい)
広汎性発達障がい(PDD)/自閉症スペクトラム(ASD)/アスペルガー
- 対人関係や社会性の障がい
- コミュニケーションの障がい
- 限定した常同的な興味、行動、および活動(こだわり)
- 相手の気持ちや場の空気を読むのが苦手
- イレギュラーなことや初めての経験が苦手
- パターン化されたものを好む傾向あり
- 自分だけの強いこだわりがあり、融通が利かない
- 細かいミスが気になる
- 一つのことに没頭し過ぎる
- 併存する知的障がいの程度や一人ひとりの特性にもよるが対人関係がストレス
- 「暗黙のルール」や抽象的な指示の理解は難しい
- 指示をされないと動かない、自分の仕事が終わったら他のことはしようとしない
- 複数の仕事を同時並行して行うことは苦手
- 感覚過敏(大きな音、パッと光るものが苦手)
- 接客は難しく、臨機応変な対応は苦手なことが多い
- 集中力があり、細かいこともコツコツとこなす。天才肌。エンジニアや研究者、職人など特殊技能を必要とする仕事に向いていることがある
注意欠陥/多動性障がい(AD/HD)
- 注意力散漫 ⇒ うっかりして同じ間違いを繰り返す
- 多動性 ⇒ おしゃべりが止まらない、待つことができない、じっとしていられない
- 衝動性 ⇒ 衝動的な行動、約束や決まりごとを守れない、せっかちでイライラがよくある
- 注意欠陥のみのタイプ、多動性のみのタイプ、注意欠陥も多動性も両方あるタイプがある
- 集中力が続かず、周りが気になってしまう
- 落ち着きがない
- 物をなくすことや忘れ物が多い
- 不注意から同じミスを繰り返す
- 「臨機応変に」をやり過ぎてしまう
- アイデア豊富、固定概念にとらわれず自由に考えられる
- 行動力がある
- 独特な感性がある
- 一般的にミスが絶対許されない作業は不向き
- 興味のあることに対しては情熱を持ち、高い集中力を発揮する
- 芸術家、クリエイター、起業家、社長など時間や仕事のリズムに自由度をもたせ、新しいアイデアや変化を問う仕事に向いている
学習障がい(LD)
- 算数障がい ⇒ 暗算などは苦手 ⇒ 計算機やレジスターでカバー
- 書字障がい ⇒ 文字を書くのは苦手 ⇒ パソコンなど入力と出力でカバー
- 読字障がい ⇒ 読むのは苦手 ⇒ 録音や音声読み上げソフトでカバー
- 苦手な業務が多い仕事内容はストレス
- 別の手段(代替)やテクノロジー、職場の理解・協力があれば十分カバーできることが多い
発達障がい マネジメントのポイント
その方の特性に合った職業に就くことができれば、強みを活かして活躍できます。ただし、1つの仕事であれば問題なくても、複数のことを求められると支障が出てくる場合があります。
強みとして、まじめ、几帳面、集中力がある、律儀でルールを絶対に守る、すぐに行動する、視覚による情報処理力、具体的なことへの理解、感覚の過敏さ、特定なことへの興味や理解があげられます。
- 視覚による指示出し(ホワイトボードや紙に書く、メールetc)
- スケジュールや作業手順にできる限り見通しをつける
- 複数の指示を同時にしない
- 指示系統を一本化(担当者を固定)
- 小さな集団での対応が原則
- 職場のルールを明確に
- 報・連・相の徹底
- 質問しやすい環境を作る(面談や振り返り)
- 感情をはさまず、簡潔明瞭に伝える(感情的・抽象的に叱っても無意味)
発達障がいの障害年金/障がい者雇用への思い
社会保険労務士は、「社会保険(年金)」と「労務(企業の労務管理)」の両者ができてこそ「社会保険労務士」である。これが私(一丸綾子)のポリシーです。
私は、自分で障がい者雇用担当者を経験し、一方で、障害年金業務も行っています。母親でもあります。雇う側、雇われる側、母親、三者の気持ちがわかることが、最大の強みです。
発達障害の障害年金は、就労状況が受給を大きく左右します。これまで、「働いていると障害年金は受けられないと言われてきた」とおっしゃるご相談者様に数えきれない程出会ってきました。お話を聞いてみると、もらっているお給料は、決して一人前とは言えない金額です。だから、ご本人様は常勤(正社員)になることを望まれています。
では、雇う側の考えはどうでしょうか?常勤待遇にするからには、職場の常勤の方々と同程度レベルにお仕事をこなしていただきたいのが本音です。
だからこそ、このような方々に障害年金を受けていただきたいのです。何とか働いているお給料+障害年金で、一人前のご収入にしていただたい!これが、私の障害年金に対する信念です。私が作成する「病歴・就労状況申立書」、職場の方からの「陳述書」には、こういった魂が込められています。
ガイドラインでは、以下のように定められています。
「現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思の疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断すること。」
「援助や配慮が常態化した環境下では安定化した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」
「就労継続支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行についても同様とする。障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。」
「就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。」
「一般雇用での就労の場合は、月収だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。」
「保護的環境下での専ら単純かつ反復業務であれば、2級の可能性を検討する」
「執着が強く、臨機応変な対応が困難であることにより常時管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。」
「他の従業員との意思疎通が困難で、かつ不適切な行動がみられる等により、常時管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する。」
従って、面談時のヒアリングや職場の上司へのヒアリングでは、これらの実態を紐解いていくように心がけています。