就労と障害年金①(精神障がい)

精神障がい マネジメントのポイント

就労現場に出てくるのは症状が安定した段階の方々です。ただし、疲れやすさ、ストレスへの弱さが見られます。新しい環境や仕事に対して必要以上の不安感を抱えやすいため、成功体験や達成感を重視したコミュニケーションをとるとよいと言われています。

強みとして、まじめ、責任感が強い、手を抜かずに仕事をする、控えめ、繊細、やさしいがあげられます。

  • クレーム処理や対人業務はなるべく避ける
  • 補助的業務で納得性が高い
  • 短時間勤務からスタート
  • 服薬や水分補給のための休憩時間を与える
  • 通院への配慮
  • こまめな声掛け(自分から「疲れた」「休みたい」と言うのが苦手)
  • 困ったときに相談できる体制(月1~2回の面談)
  • 肯定的な指示(注意はしてよい)
  • 指示は具体的に行う(具体的にやってみせる、「あれ」「それ」で指示しない、視覚化)

就労していると障害年金はどうなる?

社会保険労務士は、「社会保険(年金)」と「労務(企業の労務管理)」の両者ができてこそ「社会保険労務士」である。これが私(一丸綾子)のポリシーです。

私は、自分で障がい者雇用担当者を経験し、一方で、障害年金業務も行っています。母親でもあります。雇う側、雇われる側、母親、三者の気持ちがわかることが、最大の強みです。

就労していると、精神疾患や内科的疾患(心疾患、腎疾患、肝疾患等)は、外部疾患(眼、聴覚、肢体の障害等)よりも障害年金が不支給または支給停止になりやすいです。特にご相談が多いのが精神疾患ですが、障害認定基準やガイドラインでは、以下のように定められています。 

「現に仕事に従事している者については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思の疎通の状況等を十分考慮したうえで日常生活能力を判断すること。」 

「援助や配慮が常態化した環境下では安定化した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する 

「就労継続支援A型・B型及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行についても同様とする。障害者雇用制度を利用しない一般企業や自営・家業等で就労している場合でも、就労系障害福祉サービスや障害者雇用制度における支援と同程度の援助を受けて就労している場合は、2級の可能性を検討する。」

「就労の影響により、就労以外の場面での日常生活能力が著しく低下していることが客観的に確認できる場合は、就労の場面及び就労以外の場面の両方の状況を考慮する。」

「一般雇用での就労の場合は、月収だけでなく、就労の実態を総合的にみて判断する。」

「1年を超えて就労を継続できていたとしても、その間における就労の頻度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する。」「精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻等)を考慮する。」

「発病後も継続雇用されている場合は、従前の就労状況を参照しつつ、現在の仕事の内容や仕事場での援助の有無等の状況を考慮する。」

「仕事場での臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況が見られる場合は、それを考慮する。」

従って、就労中のお客様からご依頼をいただいた場合は、診断書作成時に、医師へ就労時の不自由さを伝えていたり、職場の同僚の方々から援助を受けている様子の陳述書を添付しています。 

例えば、当事務所内の障がい者雇用(精神の方)では、締切りまでの期限が長いお仕事を振り分けるようにしています。また、できるだけ本人の好きな仕事・得意な仕事を与えていますし、できるだけ新しいお仕事ではなく、定期的な業務を行ってもらっています。彼女が「電話は取次ぎを失敗するのが恐いから」と言うので電話は免除し、「テストすると聞くと不安で何日も前から眠れなくなる」と言われれば、テストではなく自宅学習で対応しています。これも十分な配慮だと考えています。 

ご相談者様は病気の影響で、周囲の配慮に気付いていない場合がございますが、ご本人様が意識していなくても、実は、周りの人がかなり配慮してくれているケースが多いです。 

面談時のヒアリングでは、ご本人様にとってできないことや嫌いなことから、どのように仕事をこなしていらっしゃるのか聞き取るようにして、配慮の実態を紐解いていくように心がけています。そして、職場の上司からご署名・ご捺印付の証言を頂戴できる方からの障害年金のご依頼を積極的にお引き受けしています。

精神障がい 採用のポイント

  1. 就労意欲
  2. 病状の安定度
  3. 病気の自己理解、受容
  4. 病気からくる苦手さの理解、受容
  5. 不調、苦手なことへの対処法
  6. 一定の社会マナー
  7. 業務スキルの高低
  8. 就労支援機関サポートの有無
  9. 家族や協力者

精神障がい 採用面接のポイント

本人に対して 支援者に対して
具合の悪くなる時期(季節) 働く上で配慮した方がいいこと
受診頻度 家族との関係性
具合が悪くなったときの状態とSOSサイン トラブルが生じた際の対応方法
怠薬過去 協力者の有無
入院歴 体力面
直近2~3年の精神状態 指導方法、指示の仕方
服薬時間 病状(悪いことも)
手帳/障害年金更新の意思 性格
配慮してほしい点 作業能力、得意不得意

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